スクラムのプロセス
スクラムプロセスは、スクラムプロジェクトに特有なアクティビティとフローに対応します。基本的なスクラムプロセスが19あり、あらゆるプロジェクトに適用することができます。これらのプロセスは、表1-1に示すように、5つのフェーズにグループ化され、SBOK™ ガイドの第 8 章から第 12 章で説明されています。
章 |
フェーズ | 基本的なスクラムプロセス |
8 |
イニシエイト
(Initiate) |
1. プロジェクトビジョンの作成
2. スクラムマスターとステークホルダーの特定 3. スクラムチームの結成 4. エピックの開発 5. プロダクトバックログの作成 6. リリースプランニングの実施 |
9 |
計画と見積
(Plan and Estimate) |
7. ユーザーストーリーの作成
8. ユーザーストーリーの見積 9. ユーザーストーリーのコミット 10. タスクの特定 11. タスクの見積 12. スプリントバックログの作成 |
10 |
実装
(Implement) |
13. 成果物の作成
14. デイリースタンドアップの実施 15. プロダクトバックログのグルーミング |
11 |
レビューとレレトロスペクト
(Review and Retrospect) |
16. スプリントのデモと検証
17. レトロスペクトスプリント |
12 |
リリース
(Release) |
18. 成果物の出荷
19. レトロスペクトプロジェクト |
表 1‑1: 基本的なスクラムプロセスの概要
イニシエイトのフェーズ
1. プロジェクトビジョンの作成 (Create Project Vision) – プロジェクトビジネスケースをレビューして、プロジェクトビジョンステートメントを作成します。それは、プロジェクト全体を俯瞰するものです。このプロセスで、プロダクトオーナーが特定されます。
2. スクラムマスターとステークホルダーの特定 (Identify Scrum Master and Stakeholder) – 特有の選択基準を使用して、スクラムマスターとステークホルダーを特定します。
3. スクラムチームの結成 (Form Scrum Team) – スクラムチームのメンバーを特定します。通常、プロダクトオーナーは、チームメンバーを選ぶ責任を主に担いますが、多くの場合、スクラムマスターに協力してもらいます。
4. エピックの開発 (Develop Epic(s)) – プロジェクトビジョンステートメントがエピックの開発の基礎となります。ユーザーグループミーティングを開催して、エピックを適切なものにするように議論することもあります。
5. プロダクトバックログの作成 (Create Prioritized Product Backlog) – エピックが洗練され、詳細化されます。そして、プロジェクトのプロダクトバックログが作成されます。この時点で、完了基準 (Done Criteria) も確立されます。
6. リリースプランニングの実施 (Conduct Release Planning) – スクラムコアチームが、プロダクトバックログにあるハイレベルなユーザーストーリーをレビューして、リリースプランニングスケジュールを作成します。それは、段階的な展開スケジュールであって、プロジェクトのステークホルダーと共有するものです。スプリントの長さもこのプロセスで決定されます。
計画と見積のフェーズ
7. ユーザーストーリーの作成 (Create User Story) – ユーザーストーリーと、それに関連するユーザーストーリーの受入基準が作成されます。ユーザーストーリーは通常、プロダクトオーナーによって作成され、顧客の要件が明確に記述され、すべてのステークホルダーが完全に理解することができるようにデザインされます。スクラムチームのメンバーとともに、ユーザーストーリーを作成することができるよう、ユーザーストーリーの作成演習を行うこともあります。ユーザーストーリーは、プロダクトバックログに組み込まれます。
8. ユーザーストーリーの見積 (Estimate User Story) – プロダクトオーナーはユーザーストーリーを明確にします。そして、スクラムマスターとスクラムチームが、各ユーザーストーリーで説明されている機能を開発するために必要な労力を見積もります。
9. ユーザーストーリーのコミット (Commit User Story) – スクラムチームが、プロダクトオーナーの承認済みユーザーストーリーを、来るスプリントでデリバリーすることをコミットします。このプロセスの結果として、コミット済みユーザーストーリーとなります。
10. タスクの特定 (Identify Tasks) – コミットされたユーザーストーリーは特定のタスクに分類され、タスクリストに集められます。
11. タスクの見積 (Estimate Tasks) – スクラムコアチームはタスクリストにある各々のタスクを完了するために必要な作業量を見積もります。このプロセスの結果が、工数見積済タスクリストとなります。
12. スプリントバックログの作成 (Create Sprint Backlog) – スクラムコアチームがスプリントプランニングミーティングを開催し、グループがスプリントで完了すべきタスクをすべて含むスプリントバックログを作成します。
実装のフェーズ
13. 成果物の作成 (Create Deliverables) – スクラムチームはスプリントバックログのタスクに取り組んで、スプリント成果物を作成します。スクラムボードは、実行される作業や活動を追跡するためによく使用されます。スクラムチームが直面している問題は、インペディメントログで更新していくこともあります。
14. デイリースタンドアップの実施 (Conduct Daily Standup) – 集中度の高いタイムボックスミーティングが毎日開催されます。それはデイリースタンドアップミーティングと呼ばれています。これは、スクラムチームが自分達の進捗状況と直面する可能性のあるインペディメントについて、お互いにアップデートしていくフォーラムです。
15. プロダクトバックログのグルーミング (Groom Prioritized Product Backlog) – このプロセスでは、プロダクトバックログを継続的に更新および維持します。プロダクトバックログレビューミーティングを開催することもあります。そこでは、バックログに対する変更や更新について議論し、必要に応じてプロダクトバックログに組み込むのです。
レビューとレトロスペクトのフェーズ
16. スプリントのデモと検証 (Demonstrate and Validate Sprit) – スクラムチームはスプリントレビューミーティングで、プロダクトオーナーおよび関連するステークホルダーに対して、スプリントの成果物をデモします。このミーティングの目的は、スプリントで作成された成果物の承認を、プロダクトオーナーから得ることです。
17. レトロスペクトスプリント (Retrospect Sprint) – スクラムマスターとスクラムチームがミーティングを開き、スプリント全体で学んだ教訓について話し合います。この情報は、将来のスプリントに適用できる教訓として文書化されます。多くの場合、この議論の結果として、合意済み実行可能な改善項目または更新済スクラムガイダンスボディーの推奨事項となる場合があります。
リリースのフェーズ
18. 成果物の出荷 (Ship Deliverables) – 受入済み成果物は、関連するステークホルダーにデリバリーまたは移行されます。正式なワーキング成果物契約書で、スプリントの正常な完了を文書化します。
19. レトロスペクトプロジェクト (Retrospect Project) – プロジェクトが完了すると、組織のステークホルダーとスクラムコアチームのメンバーが集まって、プロジェクトを振り返ります。学んだ教訓を特定し、文書化し、そして内部に展開します。多くの場合、これらのレッスンは、合意済み実行可能な改善項目として文書化され、将来のプロジェクトで適用されることが期待されます。
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