スクラムの概要

スクラムの概要

スクラムプロジェクトでは、プロジェクトビジョンステートメント (Project Vision Statement) で定義された新しいプロダクト、サービス、またはその他の結果を作成するための共同作業が必要です。プロジェクトは、時間や、コスト、スコープ、品質、リソース、組織の機能、およびその他の制限によって影響を受け、計画や、実行、管理に支障をきたし、そして最終的にはプロジェクトの成功が困難となる場合があります。ただし、完成したプロジェクトの結果を正しく実装すると、組織にとって大きなビジネス上のメリットが得られます。したがって、組織は適切なプロジェクトマネジメントアプローチを選択し、それを実践することが重要です。

スクラムは最も一般的なアジャイル (Agile) 手法の 1 つです。これは、プロジェクト全体で大きな価値を迅速に提供するように設計された、適応性、反復性、高速、柔軟、および効果的なフレームワークです。スクラムは、コミュニケーションの透明性を確保し、集団的説明責任と継続的に進歩する環境を作り出します。スクラムのフレームワークは、SBOK ガイドで定義されているように、複雑さに関係なく、あらゆる種類の産業およびあらゆる種類のプロジェクトにおいて、プロダクトおよびサービスの開発をサポートする方法で構成されています。

スクラムの重要な強みは、仕事をスプリント (Sprint) と呼ばれる短く集中した作業サイクルに分割する、機能を越えた、自己組織化された、権限を与えられたチームを適用するところです。図 1-1 に、スクラムプロジェクトのフローの概要を示します。

図 1‑1: スクラムフロー (1回のスプリント)

スクラムサイクルは、プロジェクトビジョン (Project Vision) が作成されるプロジェクトビジョンミーティング (Project Vision Meeting) から始まります。プロダクトオーナー (Product Owner) は、ユーザーストーリー (User Story) の形式で記述されたビジネス要件とプロジェクト要件の優先順位付きリストを含む、優先順位付きプロダクトバックログ (Prioritized Product Backlog、以下単に「プロダクトバックログ」と表現) を作成します。各スプリントは、スプリントプランニングミーティング (Sprint Planning Meeting) から始まります。そこには、優先度の高いユーザーストーリーが、そのスプリントに含まれています。スプリントは通常、1~6週間の間で、スクラムチーム (Scrum Team) が出荷可能な成果物 (Deliverables) やプロダクトインクリメント (Product Increments) を作成する作業を行います。スプリント期間中、短い時間で、非常に焦点を絞ったデイリースタンドアップミーティング (Daily Standup Meetings) が実施され、チームメンバーが日々の進捗状況について話し合います。スプリントの終わりに向けて、スプリントレビューミーティング (Sprint Review Meeting) が開催され、その時に、プロダクトオーナー (Product Owner) とステークホルダーに成果物のデモが行われます。プロダクトオーナーは、事前に定義された受入基準を満たす場合にのみ成果物を受け入れます。スプリントサイクルは、レトロスペクトスプリントミーティング (Retrospect Sprint Meeting) で終了します。そこで、チームは、プロセスとパフォーマンスを改善する方法について議論し、以降のスプリントに進みます。

スクラムの簡単な歴史

80年代半ば、竹内弘孝と野中郁次郎は、開発チームが共通の目標を達成するために一丸として働く柔軟で包括的なプロダクト開発戦略を定義しました。彼らは、全体的なアプローチまたは「ラグビー」アプローチと呼ばれるプロダクト開発への革新的なアプローチを紹介しました。「フィールドでは、ボールを前に後に渡しながら、ユニットとしてゲインを稼ぐことを試みるものだ」と提案しました。彼らは、様々な業界の製造に関するケーススタディに基づいたアプローチを行いました。竹内と野中は、製品開発は連続したリレーレースではなく、それはラグビーの試合に似ていて、フィールドではボールを前に後に渡しながらユニットとしてチームが一緒に働くものだと提案しました。この記事では、製品開発には「スクラムはダウンフィールドへの移動」を伴う必要があるという著者の提案を説明するために、「スクラム」というラグビーの概念 (プレーヤーのグループが一緒になってゲームを再開する場所) が導入されました。

ケン・シュワーバー (Ken Schwaber) とジェフ・サザーランド (Jeff Sutherland) は、1995年にテキサス州オースティンで開催されたオブジェクト指向プログラミング、システム、言語およびアプリケーション(OOPSLA)ミーティングでのプレゼンテーションで、スクラムの概念とソフトウェア開発への適用性について詳しく述べました。それ以来、スクラムの実践者、専門家、著者の何人かは、スクラムの概念化とフレームワークを改良し続けています。近年、スクラムは一般的になり、現在では世界中の多くの組織にとって好ましいプロジェクト開発アプローチとなっています。

スクラムを使用する理由

プロジェクトでスクラムを使用する主な利点は次のとおりです。

1. 適応性 – 経験的プロセス制御と反復デリバリーにより、プロジェクトは適応性が高くなり、変化を取り入れることにオープンになります。

2. 透明性 – スクラムボードやスプリントバーンダウンチャートなどのインフォメーション・ラジエーター (information radiator、情報掲示板) はすべて共有され、オープンな作業環境になります。

3. 継続的なフィードバック – デイリースタンドアップの実施、プロセスのデモと検証スプリントを通じて継続的なフィードバックが提供されます。

4. 継続的改善 – 成果物は、プロダクトバックログのグルーミングプロセスを通じて、スプリントごとに段階的に改善されます。

5. 価値の継続的な提供 — 成果物の出荷プロセスを通して、反復プロセスにより、顧客が必要とする頻度で、価値を継続的に提供できます。

6. 持続可能なペース – スクラムのプロセスは、関係者が持続可能なペースで作業できるように設計されており、理論的には無期限にそれを継続できます。

7. 高い価値の早期デリバリー – プロダクトバックログ作成プロセスにより、顧客にとって最高の価値を生み出す要件が最初に満足されるようにします。

8. 効率的な開発プロセス – タイムボックスを用い、重要でない作業を最小限に抑えることで、効率の向上につながります。

9. モチベーション – デイリースタンドアップとレトロスペクトスプリントのプロセスによって、従業員のモチベーションが高まります。

10. 迅速な問題解決 – クロスファンクションチームのコラボレーションとコロケーションにより、問題が迅速に解決されます。

11. 効果的な成果物 – プロダクトバックログの作成プロセスと、成果物作成後の定期的なレビューにより、お客様にとって効果的な成果物とします。

12. カスタマーセントリック – ビジネスバリューを重視し、ステークホルダーに対して協調的なアプローチを取り入れ、顧客指向のフレームワークとします。

13. 信頼性の高い環境 – デイリースタンドアップの実施とレトロスペクトスプリントのプロセスによって、透明性とコラボレーションが促進されます。従業員間の摩擦を抑え、高い信頼関係に基づいた職場環境へとつながっていきます。

14. 共同オーナーシップ – ユーザーストーリーのコミットプロセスにより、チームメンバーはプロジェクトのオーナーシップとその作業を引き受け、品質の向上へとつながっていきます。

15. 速いベロシティ (High Velocity) – 協調的なフレームワークを用いて、高度なスキルを持つクロスファンクションチームが、その潜在能力を最大限発揮し、そのベロシティ(速度)を最高のものとします。

16. 革新的な環境 – レトロスペクトスプリントおよびレトロスペクトプロジェクトのプロセスにより、自己反省や、学習、そして適応性の高い環境を作り出し、革新的で創造的な作業環境を実現します。

スクラムのスケーラビリティ

スクラムチームは、6~10人のメンバーが理想です。これが、スクラムのフレームワークは小規模なプロジェクトにしか使用できないという誤解の理由を生んだのかもしれません。大規模なプロジェクト、プログラム、およびポートフォリオで効果的に使用できるように簡単にスケーリングできます。スクラムチームのサイズが10人を超える状況では、プロジェクトに対して複数のスクラムチームを形成して作業するのです。このフレームワークのガイドラインと原則の論理的アプローチは、地域や組織にまたがるあらゆる規模のプロジェクトを管理するために使用できます。大規模なプロジェクトでは、複数のスクラムチームが並行して動作し、情報の流れを同期化して容易にし、コミュニケーションを強化する必要があります。大規模なプロジェクトや複雑なプロジェクトは、多くの場合、プログラムまたはポートフォリオの一部として実装されます。

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